階段と街頭と人間と恋 ―国内建築行脚なぞなぞ

2010/06/11 種田元晴




 |2007年8月14日|京都駅

世にも怖い話でもなく
大切な打合せでもなく
ぼくを支配するものは
人々を飾り囃すひな壇

ぼくは何色にも染まらない
古都の奏でる空を映え
音色に染まるシューボックス

ここは
オデッサだらうか
それとも
アンタッチャブル
な禁中だらうか




|2008年3月6日|せんだいメディアテーク

見上げる空と
映る空が
同じ空とは限らない
見上げる空は
薄ら雲を浮かべるけれど
映る空は
薄ら笑いも浮かべるから

目をつむれば
ランプとマントは
おんなじだらう
あてはまることとも
まちの片隅とも
おんなじだらう
これら以外のおんなじは
見当たらないだらう




|2008年3月10日|青森県立美術館

たしかに
私は色白かもしれません
でも
いまはそんなことは
どうでもよいのです私はお腹がすいているのです

どうぶつえんで
最も多い動物が
私の中に満たされたなら
お肉屋さんで
最も大きなお肉が
いちばんの作品であつたなら
私は空腹などではないのです




|2008年8月16日|直島

燃え尽きる前に空は
泡消火設備によつて
消し止められた
泡による
冷却作用と
窒息作用とで
消し止められた

淡いなにかも
冷却作用と
窒息作用とで
消し止められた

でも泡は
電気絶縁性がないので
ビビビとくるかもしれない


(第13回「法匠展」出展作品,法政大学建築同窓会主催,2010.6)